1. 限界に気づいた朝と、守りたい日常、そして決意
その朝、目覚ましが鳴っても体は動かなかった。
痛みも混乱もなく、ただ「前に進む力がどこにもない」という静かな感覚だけがあった。
妙に冷静だった。
ああ、これはもう無理だな。
その言葉が胸の奥に落ちた瞬間、私は悟った。
このままの気持ちで会社では働けない。
それは逃げではなく、ただの事実だった。
リビングに向かうと、妻は私の顔を見た瞬間に気づいた。
「今日は無理なんだね」と静かに言った。
責める声ではなかった。
その優しさが、逆に胸に刺さった。
上司に電話をすると、思っていたよりも柔らかい声が返ってきた。
「分かりました。無理しないでください」
救われる気持ちと、苦しさが同時にあった。
会社に対しては、
「迷惑をかけてしまった」という申し訳なさと、
「制度を利用させてもらうしかない」という割り切りが、
静かに胸の中で同居していた。
電話を切ったあと、
私はふと、休職中に感じていた小さな日常の光を思い出した。
子どもを送り出す朝の時間。
整った部屋に差し込む柔らかな光。
夕方の、家の中にゆっくりと影が伸びていく時間。
あの静けさは、
私にとってただの“休み”ではなく、
「自分が守りたいもの」 そのものだった。
その日常を手放してまで、
心をすり減らしながら働く意味はあるのか。
そう思うと、胸の奥がじんわりと痛んだ。
同時に、
胸の奥にひとつの決意が生まれた。
この2年間で、理想を実現するしかない。
休職期間であれば、
収益が出なくてもいい。
失敗してもいい。
誰にも迷惑をかけない。
挑戦することだけに集中できる。
この2年間をどう使うかで、
これからの人生が決まる。
私は、
ただ会社から離れたいわけではない。
ただ働きたくないわけでもない。
「自分の人生を、自分で選び直したい」
その思いが、
静かに、しかし確かに形になり始めていた。
2. 自分と向き合うための問いが生まれた時間
決意が生まれたあと、
私はノートを開いた。
けれど、
何を書けばいいのか分からなかった。
ブログかもしれない。
SNSかもしれない。
別の何かかもしれない。
外側の選択肢をいくら並べても、
心は動かなかった。
そのとき、
ふと気づいた。
外側ではなく、内側を見つめる必要がある。
そう思った瞬間、
胸の奥に静かな波紋が広がった。
じゃあ、
自分の内側とは何だろう。
今の自分に根幹として残っているものは何だ?
何がしたい?
何がしたくない?
何を手放し、何を守るべきなのか?
問いは次々に浮かんでくるのに、
どれもすぐには答えにならなかった。
でも、
その問いが浮かんできたこと自体が、
自分の中で何かが動き始めた証拠のように思えた。
「まずは、この問いと向き合うところから始めよう」
そう思ったとき、
静かに、しかし確かに、
次の章への扉が開いた気がした。

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